2024/11/09 14:30

ジオラマ製作や模型作りの際、接着剤を間違えて思い通りの作品に仕上がらなかった経験はありませんか?せっかく各パーツを丁寧に作ったのに、接着剤選びを間違ったせいで台無しになってしまうこともあり、それはなんとしても防ぎたいですね。

ジオラマ製作や模型作りでどのようにパーツ同士を接着するかを考える際、単に素材だけではなく、容器の形状や仕様、接着方法や順番、接着剤を付けた後の固定方法など、様々な点を踏まえて、最適な接着剤を選ぶ必要があります。本コラムでは、皆様のジオラマ製作において最適な接着剤選びに資するよう、多様な観点から接着剤について徹底解説させて頂きます。

1回目の今回は、素材についてです。

1.瞬間接着剤

シアノアクリレートを主成分として、空気に触れると空気中のわずかな水分と反応して急速に硬化することで接着します。

表面がなめらかな素材でも接着できることが強みですが、発泡スチロールなど一部の素材を溶かしてしまったり、はみ出た接着剤が硬化して白くなって(白化現象)ジオラマが汚くなってしまうケースもあります。
瞬間接着剤の中でも粘度(粘り気)に差があり、模型用には一般に粘り気の高いものを使う方が、他の部分にはみ出てしまわないのでおすすめです。ある程度の瞬間接着剤であれば百均などで手に入りますし、模型用の瞬間接着剤も売られています。

割と何でも接着でき、接着力も強いため、ジオラマ製作ではよく使われます。ただし、接着が早い分、接着位置を調整しながらゆっくり接着してほしい場合や、接着剤を広範囲に塗って少しづつ作業したい場合などには不向きです。硬化後は固く柔軟性がなくなるため、衝撃を吸収しにくいというデメリットもあります。

なお、意図せずはみ出てしまった場合には、「はがし液」を使って(綿棒などに塗って)こそげ落とすこともできます。

そして、瞬間接着剤の1種として、難接着物専用瞬間接着剤というものもあります。これはプライマーを塗布することで、接着力を大幅に向上させたものです。ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコーンゴム、ポリアセタール、フッ素樹脂といった、ツルツルして接着しにくいモノを接着するのに適しています。

2.木工用ボンド(水性接着剤)

水性接着剤の1種で、酢酸ビニル樹脂系の素材から、水分が抜ける(乾燥する)ことで接着します。乾燥前は乳白色、乾燥後には透明になります。乾燥後はある程度硬くなりますが、若干の柔軟性はあります。

接着速度は瞬間接着剤よりやや遅く、またプラスチックや金属などの表面の接着は苦手です。接着後の耐水性や耐アルカリ性は低い点も(模型ではあまり無いと思いますが)注意が必要です。

乾燥の速度がやや遅いので、塗布後すぐに接着せず、10分ほど置いて半乾きの状態で付けた方が作業がしやすい場合もあります。

とはいえ、模型で使う素材は木や紙なども多いので、割と多用されます。接着後に透明になる点は、接着面が見えてしまう場合には強みになります。例えば、ミニチュアの木の枝に葉を付ける場合、葉の隙間から接着面がチラ見えしますが、ボンドであれば透明なので目立ちません。

また、(接着ではないですが)水の表現としてボンドを用いることもあります。乾くと透明になるため、少量の水の表現(バケツにたまった水)や、水表現専用の素材に比べて粘性があるため波の表現等にも使われます。

なお、ボンド以外の水性接着剤としては、透明な部品でも目立たずに接着できる模型用の接着剤も売られています。また、ボンドは固まるとツヤが出るのが特長ですが、それを無くした(固まった後にツヤがなくなる)タイプの接着剤もあります。

3.エポキシ系接着剤

エポキシ系接着剤は、2種類の液を混ぜ合わせることで化学反応を起こし、強力な接着力を発揮する接着剤です。主剤と硬化剤を混ぜて使うため、「2液混合型」とも呼ばれます。

ジオラマ製作において、エポキシ系接着剤は、その強靭な接着力から、強度が必要な部分の接着に最適です。例えば、ジオラマの土台となる木材や石膏の接着、金属やプラスチックなど異なる素材同士の接着に威力を発揮します。また、硬化後は耐水性・耐候性・耐薬品性に優れているため、屋外に設置するジオラマや、水を使うジオラマにも安心して使用できます。

硬化時間は、数時間から数日と、接着剤の中では比較的長めです。そのため、接着位置を調整しながら作業を進めることができます。また、粘度が高いものが多く、隙間を埋めたり、パーツを固定したりするのにも便利です。さらに、硬化後に研磨や塗装ができるため、ジオラマの仕上げにも役立ちます。ジオラマの強度を高めたい部分に、エポキシ系接着剤を充填することで補強する、という用途も考えられます。

しかし、エポキシ系接着剤は、一度硬化すると非常に硬くなるため、柔軟性がありません。衝撃が加わると破損する可能性があるので、注意が必要です。また、主剤と硬化剤を正確な比率で混ぜる必要があるため、扱いにくい面もあります。

4.UVレジン接着剤

接着剤を塗った後に、コチラの好きなタイミングで接着できる接着剤です。

合成樹脂(レジン)を用いた接着剤で、付属するライトのようなもので紫外線(UV)を当てると硬化します。硬化速度が速く、数分で硬化するのが特徴です。透明度が高く、黄変しにくいので、水面の表現やクリアパーツの接着に適しています。硬化後は柔軟性は無く、固くなります。また、面どうしの接着のように紫外線が届かない部分には使用できないという制限があります。

接着剤を塗った後に位置決めをゆっくりしたい場合に重宝します。接着剤を塗っただけだと全く固まらないので、その状態でパーツを好きに動かし、位置が決まったら紫外線を当てるとすぐに、また割と強力に固まります。

5.ドープセメント

ドープセメントは、プラスチック専用の接着剤です。プラモデルの素材であるスチロール樹脂を溶かし、それを再び固めて一体化させるように接着します。そのため、接着剤というよりも「溶接剤」に近い性質を持っています。

プラスチック(プラモデルで一般的なスチロール樹脂(PS)や、メッキパーツで使われるABS樹脂)どうしの接着で威力を発揮します。接着面が溶けて一体化するため、非常に強力な接着力を得られます。また、溶接のように接着面が滑らかになり、継ぎ目が目立ちにくい仕上がりになるのも利点です。

しかし、ドープセメントは他の素材には使用できません。また、溶剤の揮発性が高く、引火しやすいので、取り扱いには注意が必要です。さらに、一度接着すると剥がすのが難しいため、位置決めは慎重に行う必要があります。

通常の、接着剤を塗ってからパーツをくっつけるタイプのものの他、「流し込みタイプ」というものも売られています。これは、パーツを(接着剤無しで)くっつけた後に、その隙間に接着剤を流し込んでいくタイプで、狭い隙間にするっと流れ込んでくれるので、広範囲に塗りたい場合(通常タイプだと塗っている間に乾いてしまう)や、後から接着面を補強するときなどに有効です。

6.その他の接着剤

ジオラマ製作では、上記以外にも様々な接着剤が使われることがあります。

ゴム系接着剤は、弾力性のあるゴムを主成分とした接着剤です。ゴム同士や、ゴムと布、皮革、木材などを接着する際に使用します。ジオラマ製作では、ゴム製のタイヤやベルトなどを接着する際に役立ちます。ただし接着剤の粘り気が強く糸を引くので、少し使いにくいです。

シリコン系接着剤は、耐水性・耐候性・耐熱性に優れた接着剤です。硬化後はゴム状になり、柔軟性があります。屋外に設置するジオラマの接着には適しています。接着力が弱く、硬化に時間がかかるというデメリットがあります。

ホットメルト系接着剤は、熱で溶かして接着するタイプの接着剤です。グルーガンと呼ばれる器具を使って接着します。接着速度が速く、様々な素材を接着できるのが特徴です。ジオラマ製作では、木材やプラスチック、布などを接着する際に使用できます。ただしグルーガンから(模型用ととしては)割と多めに接着剤が出るので、狭い範囲だけ接着するのが苦手です。

これらの接着剤は、使用する機会は少ないかもしれませんが、特定の用途で役立つ場合があります。それぞれの特性を理解し、必要に応じて使用することで、ジオラマ製作の幅が広がります。

7.接着剤以外での接着

接着剤ではないですが、塗料も粘性があるため接着剤として使える場合があります。

例えば下のように、柿の木の幹の表面をざらざらさせたい場合、①塗料をエアブラシで吹き付ける、②砂をパラパラまぶす、③その上から再度塗料を吹き付ける、とすると、(多少吹き飛びますが)砂が塗料に絡めとられて良い感じにくっつきます。

また両面テープなどのテープ類で接着するケースもあります。主には仮止めや接着剤が乾くまでの固定で使われることが多いと思いますが、紙同士であれば両面テープである程度固定できます。

テープは予めカッターやハサミ(場合によってはレーザーカッター)で形を整えた上で接着できるので、はみ出す心配がないというメリットもあります。またモノによっては、貼ったり剝がしたりを繰り返せるというのも、メリットになることがあります。

そして、ホットメルト系とも似ていますが、金属同士の接着であればはんだ付けを使う方もいます。習熟すれば精密な部品も接着できそうですが、私ははんだごての操作が苦手なのでほとんど使いません。


いかがでしたでしょうか?様々な素材の中から最適な素材を選ぶヒントになれば幸いです。とはいえ、冒頭で説明したように、素材がすべてではありません。続くコラムでは、容器の形状や仕様、接着方法や順番、接着剤を付けた後の固定方法についても説明していきます。