2025/03/19 07:24

サーフェイサー?プライマー?なんとなく「塗料以外」とひとくくりにして、正しく理解していませんでした。この記事では、模型製作を前提に、この機会に以下を中心に詳しく調査したので、わかりやすくまとめます。※基本的には、アクリル塗料を使用するプラスチックモデル向けを前提に解説しています。

  • それぞれのメカニズムや役割
  • 具体的な違い
  • 使用のコツ
  • 推奨製品


1. メカニズムと役割

プライマー(下地材)は、塗装面と塗料の密着性を高める「接着剤」のような役割を持つ下塗り塗料です。英語の“Primary”(最初の)に由来し、塗装工程で一番初めに塗る層を指します。プライマーを塗布すると、素材表面に密着性の高い層が形成され、後から塗る塗料が剥がれにくくなります。特にプラスチック模型では、アクリル塗料など密着力が弱めの塗料を使う場合に、プライマーが下地にあると塗料の「食いつき」が格段に良くなり、剥離やヒビ割れを防ぎます。例えばマスキングを用いた塗り分けでも、下地にプライマーがあればテープを剥がした際に塗膜ごと持っていかれにくくなります。

サーフェイサー(下地仕上げ材、サフ)は、表面を滑らかに整え、塗装の発色や定着を良くするための下地塗料です。「Surface(表面)」が語源で、その目的はパーツ表面の微細なキズを埋めたり、素材色の違いを隠して均一な下地色を作ることにあります。サーフェイサー自体はラッカーパテを薄めたようなもので、充填剤としての効果があります。吹き付けると紙やすり跡程度の細かな傷を埋めて平滑な面を作り 、パーツの成形色を隠蔽して均一な色調に整えます。また灰色系のサーフェイサーなら下地に陰影を付けて傷や段差を見つけやすくする効果もあります。さらに下地にサーフェイサーを施すことで、上塗り塗料の食いつきもいくらか向上します(通常のラッカーや水性塗料もプラにそれなりに密着しますが、サフありの方が塗膜が頑丈になる傾向があります。総じてサーフェイサーは、下地処理として表面を整えつつ塗料の発色と定着を助ける役割を果たします。

なお、アクリル塗料との相性という点では、プライマー/サーフェイサーを施しておくことが特に有効です。水性アクリル塗料はプラスチックへの直接の付着が弱めなので、下地にプライマー層があると安心です。ラッカー系のサーフェイサーを下地に使った場合も、上にアクリル塗料を重ねるのは問題なく(ラッカー塗膜はアクリル塗料に侵されないため)、むしろ強固な下地のおかげでアクリル塗料でも剥がれにくくなります。逆に下地処理をせず生プラに直接アクリル塗料を塗ると、はがれやすかったりマスキングで塗膜が持っていかれることがあるので注意が必要です。


2. サーフェイサーとプライマーの違い

用途と機能の違い: 一般にプライマーとサーフェイサーは目的が異なります。プライマーは素材側への密着に重きを置いた下地塗料で、「これから塗る塗料の食いつきを良くし、剥がれにくくする」のが主目的です。特に塗料を弾くような金属パーツやレジン素材にはプライマー処理が欠かせません。一方、サーフェイサーは仕上がり側に重点を置いた下地塗料で、「表面の色を均一化し、細かいキズを目立たなくする」ことを狙います。サーフェイサーは充填剤としてヒケやスジ彫りのミスなど微細な凹凸を覆い、下地色を整えることで上塗り塗装の見栄えを良くします。また色付き(グレーやホワイト等)のため上塗りの発色コントロールにも使われます。


使い分け: プラスチックモデルでは多くの場合、サーフェイサーを下地塗装として吹くことでプライマー的効果もある程度得られるため、通常のPS樹脂パーツであればサフだけで塗装に入ることが多いです。しかし、金属エッチングパーツやポリ部品(PE・PP素材)など塗料が定着しにくい部位ではプライマーの使用が必須です。例えばメタルパーツにサーフェイサーを直接吹いてもポロポロ剥がれることがありますが、先に金属用プライマーを塗っておけば密着性が大幅に向上します。タミヤ製の一部サーフェイサーには「プライマー成分配合」を謳うものもありますが、完全には補えず金属上では剥がれが生じたとの報告もあります。一方、近年では「プライマーサーフェイサー」と称して両方の機能を持つ製品も増えています。例えばGSIクレオスの「Mr.プライマーサーフェイサー1000」はサーフェイサー1000に密着向上剤を加えたもので、プラモデルはもちろん金属エッチングやレジン素材にも使える万能下地材です。このような製品を使えば1度の塗装でプライマー効果とサーフェイサー効果を両立**できるので、工程を簡略化できます。総じて、通常のプラ素材にはサーフェイサー中心、特殊素材にはプライマーを追加という使い分けになり、両方の役割を兼ねた製品で効率化する方法もあります。


下地処理としての役割の違い: プライマーは透明あるいは目立たない薄層であることが多く、下地の見た目を大きく変えません。一方サーフェイサーはグレーやホワイト等に着色され、下地色そのものを塗り替えてしまいます。そのためサーフェイサーを使うと、素組み状態で色ムラのあるパーツ(例:パテ埋め部分や色プラ)でも一色に統一され、上塗り塗装の発色が安定します。逆に「成形色を活かした簡単仕上げ」が目的の場合、あえてサーフェイサーを使わない選択もあります(サフを吹くと成形色のニュアンスが消えるため)。このように、完成させたい仕上がりや工程に応じてサーフェイサーとプライマーを使い分けることが大切です。


3. 使用のコツ

塗布方法と薄吹きのポイント

プラスチックモデル用のサーフェイサー/プライマーはスプレー塗布エアブラシ(または筆塗り)の二通りがあります。初心者には手軽なスプレー缶タイプがおすすめで、その場合缶をよく振り、吹き始めと終わりはパーツから外してムラ防止するなど基本はスプレー塗装に準じます。ただしサーフェイサーは通常のカラースプレーよりやや近めの距離から速いストロークで吹くと綺麗に乗りやすいと言われます 。一度に厚塗りせず、20~30cm程度離して薄く数回に分けて吹き重ねるのがコツです。一例として、自動車補修用の要領では「下地が見えなくなるまで薄く3~5回に分け、各層10~15分間隔で塗り、最後は30分以上乾燥させる」とされています。最初から厚く吹くと塗料が垂れたりディテールを埋めてしまうため禁物です。エアブラシの場合は自分で希釈度や空気圧を調整できるので、筆塗り対応の濃度に薄めて何度か薄吹きするか、製品によっては無希釈で筆塗りできるものもあります。


乾燥時間と塗り重ね

サーフェイサーやプライマーを塗った後は、十分な乾燥時間を取ることが重要です。表面が触れる程度に乾いていても内部が完全硬化するには時間がかかります。目安としてラッカー系サーフェイサーなら指触乾燥に数分~1時間、上塗りするなら少なくとも30分~数時間は待つとよいでしょう。厚吹きした場合や湿度が高い日はさらに長めに乾燥させます。不十分な乾燥のまま上塗りすると、下地が溶け出して塗膜がひび割れたり、塗装剥がれの原因になります。特に水性アクリル系のプライマーは表面乾燥後も中まで乾くのに時間を要するため、数時間から一晩程度置くと安心です。乾燥を促進するには風通しの良い場所に置くか、ドライヤーの弱風・送風を当てる方法もあります。ただし加熱しすぎると塗膜が縮む恐れがあるので注意しましょう。


厚塗りのリスクと研磨との組み合わせ

サーフェイサーは厚塗りしすぎるとモールド(モールドやディテール)が埋まったり、表面がざらついて塗装面が荒れることがあります 。薄吹きを重ねても粒子が荒れてザラザラになった場合、完全乾燥後に耐水ペーパー(1000~2000番)で軽く研磨すると滑らかになります 。特に光沢塗装の下地には、サーフェイサーを吹きっぱなしより一度研磨しておくと上塗りの艶が綺麗に出ます。逆にフラット仕上げの場合は、サフ特有のしっとりした半ツヤ消し面をそのまま活かす手もあります。また、サーフェイサーを吹いた後に表面の傷や段差が見つかった場合は、ペーパーがけやパテ埋めで修正してから再度サフを吹き直すと良いでしょう。こうした「捨てサフ(チェック用に一度吹く下地)」は、最終的に綺麗な仕上がりにするため有効なテクニックです。なお、ヤスリ傷など粗めの傷はサーフェイサーでは埋まりきらない場合もあります。事前に600~800番程度でしっかり下地研磨しておき、サーフェイサーは消しきれない微細傷の補助と考えると良いでしょう。


4. おすすめ製品

プラスチックモデル向けには各社からサーフェイサーとプライマーが発売されています。以下にアクリル塗料との相性が良い代表的な製品や特徴を紹介します(価格は概算、入手性は国内基準)。


サーフェイサー系製品

  • GSIクレオス Mr.サーフェイサー シリーズ(溶きパテ系) – 定番中の定番。瓶入りタイプは40mlで約¥300-500、スプレーは100ml前後で¥700-¥1000程度です。番号は粒子の粗さを表し、500番は充填力が高く大きめの傷埋め用、1000番は標準的な下地仕上げ、1200番はさらに粒子が細かく滑らかな仕上がり向け。より微細な1500番(フィニッシングサーフェイサー)もあり、塗装面を極めて平滑にできます。色はグレーが基本ですが、白系のベースホワイト1000フィニッシングホワイト1500は発色重視で下地色を白く整えるのに適しています。黒系ではフィニッシングサーフェイサー1500ブラックがあり、メタリック塗装の下地やシャドウ効果狙いに使われます。いずれもラッカー系で乾燥が早く硬い塗膜になるため、この上にアクリル塗料を塗っても問題なく密着します。入手は模型店や量販店(ヨドバシ等)で容易です。

  • タミヤ ファインサーフェイサー(L) シリーズ – タミヤからもラッカー系サーフェイサーが発売されています。ライトグレイ(灰色)ホワイトが代表色で、180mlスプレー缶(大)や100ml缶(小)があり、価格は小缶で¥600-800程度、大缶で¥1200前後です 。タミヤのサーフェイサーは粒子が非常に細かく「ファイン」と銘打たれており、ディテールを損ねにくい仕上がりです。またピンクサーフェイサーオキサイドレッド(酸化赤)といったバリエーションもあり、赤系塗装の下地やAFVモデルの下地表現用に使われます。タミヤ製品の強みは安定した噴霧と入手性で、初心者でも扱いやすいです。なおタミヤは「プライマー成分配合」をうたうスーパーサーフェイサーL(No.87042)も販売しており、こちらは後述のプライマー効果も併せ持つ便利なスプレーです。

  • ガイアノーツ サーフェイサー エヴォ & メカサフ – ガイアノーツ社のサーフェイサーエヴォ(EVO)は高発色のラッカー系サーフェイサーで、白・グレー・ブラックに加えピンクやオレンジなど豊富なカラーバリエーションがあります。発色が良く塗膜も強靭なのが特徴です。瓶入り50mlで¥400前後。スプレータイプも展開されています。さらにNAZCAメカサフというシリーズは、ガンプラの内部フレーム色に一発で仕上げられるよう調色されたサーフェイサーで、例えば「メカサフヘヴィ」「メカサフライト」は濃淡グレーで下地と塗装色を兼ねる製品です。ガイアノーツ製品は一部店舗やネット通販で入手できます。

  • 水性サーフェイサー1000(GSIクレオス) – アクリル系樹脂を主成分とした水性(アクリル水性)サーフェイサーです。溶剤系に比べ刺激臭が少なく室内でも扱いやすいのが利点で、筆塗りにも適した粘度になっています。グレーとホワイトがあり、隠ぺい力も高めです。塗膜は完全乾燥後は耐水性があり上から水性塗料を重ねても溶け出しません。逆にラッカー系塗料を上塗りすると下地ごと侵す恐れがあるため、基本的には水性塗料で仕上げたい場合の下地として用います。価格は瓶40mlで¥400前後、スプレーも170ml¥800程度。水性ゆえ乾燥に時間がかかりますが、アクリル塗料愛好者には貴重な下地材です。

  • その他のサーフェイサー – 上記以外にも、溶剤系ではフィニッシャーズのサーフェイサー、クレオスのマホガニーサーフェイサー1000(赤茶色の下地で木甲板色や赤色発色向上用)、タミヤの**液体サーフェイサー(瓶入り)**などがあります。液体サフは筆塗り補修や部分塗りに便利です。またホビー以外の分野では、自動車補修用のプラサフ(プラスチックプライマーサーフェイサー)も模型に応用可能ですが、粒子が荒めで厚塗りになりやすいため上級者向けです。初心者は模型専用製品を使う方が無難でしょう。

プライマー系製品

  • GSIクレオス Mr.プライマー サーフェイサー1000 – 前述の通り、サーフェイサー1000にプライマー効果をプラスしたハイブリッド下地材です。グレー色で瓶入り(40ml)とスプレー(170ml)があり、価格は通常のサーフェイサーとほぼ同じ(瓶¥300台、スプレー¥800前後)。エッチングパーツやレジンキットにも直接吹ける密着力の高さが特長で、これ一本で金属→プラ→塗料の橋渡しができます。複合素材のモデルやABS樹脂パーツの多いガンプラ製作に重宝します。入手は模型店やネット通販で容易です。

  • 金属用プライマー(メタルプライマー) – 金属パーツを塗装する際の定番下地。代表はタミヤ メタルプライマー(透明液、10ml瓶やスプレー)やMr.メタルプライマー(クレオス)です。ごく薄い透明な皮膜ですが、真鍮線やエッチングパーツに塗っておくと、その上の塗料が剥がれにくくなります。金属以外にもPE樹脂などつるつるした素材全般に有効です。小瓶タイプは¥200-300程度と安価で、ハケで塗れるので細部の下地処理に使いやすいです。塗装前のひと手間ですが、塗料の剥離トラブルを確実に減らせるので、金属には忘れず塗布しましょう。

  • マルチプライマー(各社) – 金属以外の難密着素材用のプライマーです。ガイアノーツのマルチプライマーはABSやPE、PVCなどプラ素材全般に強力に密着する下地剤で、筆塗りできる透明液です。例えばポリキャップなど通常塗装が乗らない素材にも下地を作れます。同様にクレオスのMr.レジン用プライマーはガレージキットのレジンキャスト専用下地で、離型剤を洗浄後に吹くことで塗装の食いつきを良くします。これらは特殊用途ですが、該当素材を塗る際は活用すると安心です。価格は¥500前後、入手は専門店や通販で可能です。

  • 水性アクリルプライマー(筆塗りタイプ) – 海外製を中心に、水性アクリル樹脂系の下地剤もあります。例えばVallejo(ファレホ)サーフェスプライマーは水性アクリルの下地塗料で、白・灰・黒など各色ボトルがラインナップされています。筆塗りかエアブラシで塗布し、乾燥後は耐久性のある被膜になります。溶剤臭がない反面、完全硬化に時間がかかる点と、塗膜の強度がラッカー系よりやや劣る点に留意が必要です。国内では一部の模型店やネットで購入できます。価格は60mlで¥800前後です。水性塗料で統一したい場合に選択肢となります。


以上のように、サーフェイサーとプライマーには様々な種類があります。それぞれの特長と役割を理解し、模型の素材や仕上げたい色に合わせて使い分けることで、アクリル塗料による塗装でも美しく丈夫な塗膜を得ることができます。下地処理を適切に行えば、初心者でも塗装剥がれの失敗を減らし、発色良く仕上げることができるでしょう。